介護と保育の共生型施設。一本化する新しい福祉のかたち

2015年9月27日ニュースと考察

日本では介護の必要な高齢者は介護施設で、子どもたちの保育は保育所や幼稚園で、というのが一般的。

厚生労働省は9月17日、高齢者と子どもが1つの施設でサービスを受ける共生型施設の普及をうながすことがわかりました。
ニュースは次の通りです。

厚生労働省は17日。新しい福祉サービスの提供方針を発表した。
高齢者や子供などが1つの施設で介護や保育などのサービスを受ける
「共生型施設」の普及を促す。限られた施設や人材を有効に使い、サー
ビスを効率的に提供していく狙いだ。

 共生型施設は乳幼児の保育や高齢者向けの介護、障害者支援など今は
別々のサービスを1カ月で受けられる仕組み。人口減で地方は福祉サー
ビスの担い手不足や施設の余剰が予想される。少ない担い手でサービス
をできるよう施設を集約する。

 現在は共生型施設に配置すべき保育士や介護士の人数、調理場の数な
どのルールがない。事業者が共生型施設を運営したくても、自治体は許
可すべきか戸惑いがあった。厚労省は共生型施設の人員配置などの新ル
ールを来春までに作り、自治体や事業者に明示する。

 補助金を受けて保育施設を始めた事業者が10年以内に介護施設に転
用すれば補助金を返納しなければならない。返納義務のある期間を短く
して地域住民の福祉需要の変化に応じて施設を転用できるようにする。

 介護や子育てなど現在は別々になっている福祉サービスの相談や手続
きを、同じ窓口で応じる仕組みも全国約100自治体に設ける。

日本経済新聞2015年9月18日14版より抜粋

個人的に、高齢者と子どもが1つの施設で一緒に過ごすのは、お互いにとって刺激になるような気がします。

■社会と保健医療の10の分野の資格を1つにしたフィンランド

厚生労働省は上記のように高齢者の介護や保育、障害者支援のための一体化した施設を進めるほか、介護福祉士や保育士などの資格を一本化することも検討しています。

この「介護福祉士」「保育士」の資格を統一するという案について、日本政府が参考にしている国があります。
それはフィンランド。

フィンランドには社会と保健医療、どちらにも共通する資格があります。
ラヒホイタヤ(lähihoitaja、日本語では「日常のケア」という意味)という名前の資格で、7つの保健医療部門の資格(リハビリ助手、精神障害看護助手、ペディケア士、救急救命士-救急運転手、准看護婦、歯科助手、保育士など)と、3つの社会ケア(資格知的障害福祉士、ホームヘルパー、日中保育士)など、10の分野にわたる資格を、1つの社会・保健医療基礎資格にしています。

フィンランドもまた、日本同様、少子高齢化が問題となっている国。
2025年にはEU圏内で最も高齢化率が高くなるといわれています。
そういった状況にあるフィンランドで、少子高齢化などで福祉の人材が不足することを懸念し、人材確保を目的として設けられたのが、このラヒホイタヤ。

日本で介護福祉士、保育士の資格が統一されると、その資格を保有する専門家は共生施設で、今日は保育部門、明日は介護部門といった感じでローテーションを組んで仕事をすることもあるのかなぁ?と単純に考えてしまいました。

資格の統一、共生施設の普及が進むと、介護と保育という2つの異なる職務はトライ&エラーを繰り返しながら、それぞれの施設でサービスが熟成され、体系化されていくことでしょう。

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