介護者が退職する一番の理由とは?『介護起業』より

2016年4月14日本の紹介

先日の記事では『介護起業』を紹介しました。
そのつづきです。

「スタッフの心のケアを制する」という項目で、著者の杢野さんは述べています。

最近は全体的に改善されてきましたが、せっかく教育してもすぐに辞めてしまう人が多いのが、この業界の特徴です。 これは経営にとって大きな損失です。

そこで、本に紹介されていた「平成25年度 介護労働実態調査結果について」(公益財団法人 介護労働安定センター)を調べてみました。
http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/h25_chousa_kekka.pdf

こちらは

1.調査対象
•「事業所における介護労働実態調査」は全国の介護保険サービスを実施する事業所から無作為抽出した17,065事業所を対象にアンケート調査を実施した。
有効回答は7,808事業所であった。(有効回収率は45.8%)。

•「介護労働者の就業実態と就業意識調査」は上記の事業所の中で、1事業所あたり介護にかかわる労働者3人を上限に選出した51,195人に対し、調査票を配布してアンケート調査を実施した。
有効回答のあったのは18,881人であった。(有効回収率36.9%) 。

となります。(HPより)

個人的に興味深かった項目をピックアップしてみましょう。(アンケート参加者は正規職員、非正規職員の統計。次の%はその平均)

★前職が介護サービスの仕事ではなかった人・・・56.5%

わかること
半数以上が介護サービスの仕事に参入している。人材不足の業界だから、就職がしやすい。
2025年問題を身近に感じ、介護業界に注目している。

★現在の法人に就職した理由(占める割合が多いものより)
◯働きがいのある仕事だと思ったから・・・ 40%
◯資格・技能が活かせるから・・・39.4%
◯やりたい職種・仕事内容だから・・・38.8%
◯通勤が便利だから・・・38.8%

わかること
人と人がふれあう介護の仕事は生きがいに通じる仕事だと感じ、この仕事を選んでいる。
介護サービスの仕事に発展性を感じ、資格を取得した。キャリアもつみたい。
「通勤が便利」なのは、気軽に働きに行ける立地であること。これは 特定の仕事を担当する専門員の雇用に有効な条件であり、最終的に業務をスムースに遂行させる、仕事の分業化につながるのでは?

★直前の介護の仕事をやめた理由(占める割合が多いものより)
◯職場の人間関係に問題があったため・・・24.7%
◯法人の施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため・・・23.3%
◯他に良い仕事・職場があったため・・・18.6%
◯収入が少なかったため・・・17.6%

わかること
労働賃金の少なさは職場の人間関係の苦労や所属する施設の運営方針への疑問にくらべると、それほど深刻ではない。
離職する人の理由は人間関係がトップ。介護が必要な人や高齢者と普段接する仕事なので、どちらといえばホスピタリティにとみ、「やさしい人が多いかも」という印象。よって、対人関係にはあまりストレスがない職場だと思っていたのに、実際はそんなことはない。
職業に対するイメージと現場のギャップに悩む人も多いのでは?

職場の人間関係がもたらすストレスは、介護者のQOLをマイナスにひっぱります。

従来、就職先を探す側は募集要項や採用情報のみの判断で、アプローチするかどうか考えます。
はたして、その情報だけで決められるものなのでしょうか。

面接に行く事前に、できるだけ職場の雰囲気や現場の様子がわかっていれば、面接時からもっと業務についての奥深い話も聞けるだろうし、更に知りたいことを引き出すことも可能ですよね。

応募者が実際に就職し、現場で働いてくると「こんなはずではなかった…」と想定外のことに思い悩むことは少なくないと思います。そもそも条件の提示だけで、その職場のすべがわかるわけがない。

だからこそ雇用者がスタッフの募集をする時には、職場のリアルな情報、とくに募集職種について、実際に現場で働いているスタッフの業務を通して、発信していくことも大切だと思うのです。

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