注目のロボットスーツ「HAL」、国内医療機器承認へ 

ニュースと考察

厚生労働省は、筋力が低下した難病患者の歩行を助ける「ロボットスーツHAL」を医療機器として承認する方針を決めました。
体に装着するタイプの医療ロボットが承認されるのは初めてのこと。

 厚生労働省の専門部会は10日、全身の筋肉が徐々に動かなくなる筋
萎縮性側索硬化症(ALS)などの患者の歩行機能を改善する医療機器とし
て、筑波大発のベンチャー企業サイバーダイン(茨城県つくば市)が開
発したロボットスーツ「HAL医療用」の国内販売を了承した。

 11月中に正式承認される見通し。体に装着し、意思を反映して動き
を補助するロボットの承認は初めてとなる。今後、保険適用も検討する。

 サイバーダイン社長の山海嘉之・筑波大教授は「ロボットが(患者の)
支援だけでなく治療で効果を上げた。新しい医療分野を作る大きな一歩
だ」と話している。

 HALは下半身に装備する装置で、太ももなどの皮膚に取り付けた電極
で神経の微弱な信号を読み取り、モーターを動かして患者の関節の動き
を助ける。ALSのほか、筋ジストロフィーや脊椎性筋委縮症など8疾患が
対象。

 国立病院機構新潟病院などで実施された臨床試験(治験)では、24
人の患者で13週間以内に9回、HALを使って歩行運動をすると、外した
ときの2分間の歩行距離が平均で約17%延びた。HALを使わなかった場
合は約7%で、10ポイントの改善効果があった。さらに長期的な改善
効果は今後検証する。

 サイバーダインによると、ドイツでは既に約70台が使われている。
国内では、高齢者や障碍者らの支援を目的としたHAL福祉用が約400台
使われている。

(日本経済新聞2015年11月11日より)

日本の成長戦略には「ロボット産業」の育成も盛り込まれています。
今回、医療機器としての承認にいたるまで、申請から承認までの期間が8ヶ月を要しましたが、これは通常の医療機器よりも審査期間が4ヶ月も短縮。優先的に審査が行われたそうです。

これまで具体的な改善策がなかった難病者にとっては、ロボットスーツを使用して運動を続けることに大きな期待を寄せるでしょう。
また、歩行に不安を感じる高齢者にとっても、ロボットスーツの力を借りることで、歩行に自信がもてるようになるのでは。
来年の春には健康保険が適用されることも、明るい見通しです。

なお、自治体でHALを導入しているのは神奈川県。
今年7月、介護・看護職員の負担を軽減するため、介護現場に最先端のロボットスーツ「HAL®介護支援用(腰タイプ)」を試験導入しています。
職員の腰痛リスクの軽減やロボットの社会に導入することで、新しい社会システムの構築を目指す取り組みにも注目したいところです。

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