心の穴ぼこを埋めるには猫が一番。映画『レンタネコ』

映画の紹介

猫のレンタル屋さんという一風かわった商売を営む主人公が登場する映画『レンタネコ』(荻上直子監督、2012年)。

主人公のサヨコは都会の昭和のかおりのする平屋にたくさんの猫たちと暮らす。
株、占い師、音楽家などで生活を営みながら、年齢も性別もさまざまな人たちに猫を貸し出す。

猫を借りるのは心のどこかにあいた人たち。
猫は彼らの心の「穴ぼこ」を埋めるのだ。

フィンランドを舞台にした『かもめ食堂』の荻上直子監督によるこの作品。
以前からタイトルは知っていたものの、なかなか鑑賞する機会がなかったのですが、秋の夜長はたまには「猫モノ」でしょう!ということで観ました。
秋の夜長と猫はとくに深い意味はありません( ´ー`)y-~~

起承転結のメリハリついた展開というよりは、毎日の生活の延長にある、ドラマティックではないけれど、遭遇するとちょっとオモシロイかも、と思えるようなお話。
主人公サヨコのやさしいまなざしが感じられます。

このサヨコを演じる、市川実日子さんがはまり役。
彼女が扮するサヨコ(アジアンとサイケデリックをミックスしたようなファッションが印象的)は川べりの道をリヤカーに猫をのせて、拡声器で「レンターネコ! ネコネコ!」と呼びかける。

こういうちょっとヘンでオモシロイ人、現実にいそうな感じ。
友達になりたいけれど、やってることとキャラクターがステキすぎてなかなか近づくことができない、ちょっとあこがれのアノ人みたいに。

荻上監督作品て、もたいまさこさん(どの作品もこの人は「ニューウェーブ」な感じを醸す)のカラーが強いけれど、市川さんはその系譜を次ぐタイプ。
ユニークで、ハートウォーミングなんだけど、それほど全面に出てなくて。

荻上監督の一連の作品でいつも感動するのは、主人公が暮らす家の生活感。
今回の作品でいえば、仏壇の部屋(仏壇のお供えにパイナップルなんて斬新!)、主人公が多くの時間をすごす縁側のある部屋をつくるいろいろなものと配置、そして猫のお墓がある庭…。

今やハイビジョンの大型テレビにとってかわった、ブラウン管テレビがお茶の間の主人公だった昭和の時代の気配が濃厚でした。

ちなみに、サヨコの家の隣のおばさんを演じていたのは小林克也だったことにエンドロールで気がつきました。
私が子どもの頃、青島幸男さんが意地悪ばあさんを演じていて、男優が扮するおばさん(おばあさん)の役って同性が演じるより、毒があり好きだなー、なんかいいよなーと思ったことがよみがえりました。

秋の夜長にぜひ。