世界初の下着ショーと女の心理

2016年2月19日ライフスタイル

さまざまな下着ブランドが登場している現代は、下着のファッションショーなど珍しくありませんね。
けれど、世界で初めて下着のショーを開いた人は、海でナマコを見つけて初めて食べた人に負けず劣らず、勇気のある人だと思います。

前代未聞の下着ショーは1820年にパリで開催されました。

仕掛人はコルセットメーカーのルピケ夫人。
彼女はコルセットを発表するため、モデルに着用させたのでした。
これが、下着ファッションショーの元祖となった出来事。

ショーは大反響を呼びました。

当時、コルセットは上流階級の人のもの。
コルセットを人前で見せるとはなんと破廉恥なことでしょうと、眉をひそめる人がいたのは、容易に想像できます。
(コルセットは14世紀後半に登場し、男性もからだのシルエットをたかちよく見せるために着用していました)

しかし、このファッションショーを開催をきっかけに、コルセットは大衆化することに成功。
上流社会のものが庶民の間に広がったわけです。

■便利だと思うけど、なかなか手にとれない心理

ルピケ夫人の成功に続けとばかりに下着製品を大衆の目の前に展覧したのは、メイエ夫人。
彼女もまた有名なコルセットメーカーの人で、1823年にパリ博覧会の会場で新製品を展示・発表したのです。

メイエ夫人が発表したのは、従来コルセットに使われているバスクや鯨の骨などの硬い素材の芯ではなく、補強紐。
やわらかく締めて、体のラインをととのえることがセールスポイントでした。

しかし。
下着を身につけるなら、硬い素材よりやわらかいものの方が体にやさしい!と当時の女性たちは思ったでしょうか。
答えはノー。
ルピケ夫人の成功に続くことなく、彼女のコルセットは女性にあまり普及しませんんでした。

そして、相変わらず、硬い素材を用いたコルセットが普及していったのでした。
なぜでしょう?

この心理は時代背景新奇恐怖から紐解けます。
当時のヨーロッパの女性は現代と違い、保守的な考えををする絶対数が多かったでしょう。
ということは、自分の所属するコミュニティーで波風を立てたくない心理も働きます。
1人だけが新しいコルセットを着けるのは勇気が必要で、なかなか出来ることではないと思われます。

そして、新奇恐怖。
前述の時代背景に加え、新しいものを手に取り、使いはじめることに人は恐怖を感じます
くわしくはこの記事を。
わざわざ誰も使う人がいないコルセットは「恐怖」そのもの。
すると、コルセットは新しい素材ではなく、従来のもの、皆が使っているものが安心できるという心理が働くわけです。

■現在はアウターとして

コルセットが大衆のものとなり、製品はどんどん改良されていきます。

当時、コルセットを着用する女性を悩ませたのは、ぎゅうぎゅうに体を縛るため、紐を通す穴が破裂してしまうことでした。

しかし、1830年。
女性の悩みは解消されます。

それは金属製のハトメ穴(紐を通す小穴)。
この画期的なものを発明したのは女性ではなく男性。

しかも、彼はちょっと意外な経歴の持ち主。
この男性はナポレオン軍の軍医でもあったドーヴ氏でした。

製品が普及していくにつれ、より便利に、より気軽に使えるアイデアが登場する話を知ると、人間の智慧ってホントに素晴らしいと思わずにいられません。

その後のコルセットですが、20世紀半ばぐらいまで着用され続けられましたが、女性のファッションの多様化や下着の生地が進化していくうちに、じょじょに衰退していったのでした。

最近、下着としてのコルセットはほとんど出回っていませんが、アウターとしてゴスロリファッションを楽しむ若者たちに愛用されていますね。

コルセットでぎゅうぎゅうに締め付けて体のシルエットをととのえていた昔の人たちは、アウターに変身したコルセットを見てどう感じるでしょうか。