フランス料理と和食の元祖フュージョン「カツ丼」

食べもの

「カツ丼、食えよ」
テレビドラマで刑事が取調べしているシーン。容疑者(犯人?)に食事をすすめる時は、たいていカツ丼が登場します。

取調室という環境を考えると、おにぎりとお味噌汁のおふくろの味コンビでは家庭的すぎるし、お皿にいろんなお惣菜やごはんがのったカフェのメニューに出てきそうなワンプレートは用がなさそうだし、かといって焼きそばやうどんは食べるタイミングをはずすとまずくなる。

同じ丼ものでもウナ丼は予算の関係上、頻繁に食べられないし、出前をやってる店もそれほど多くはないと思われる。
天丼はまあ、「取調室にカツ丼」の絵に近いものがあるけれど、いろいろな天ぷらがのっかってるのがバラエティに富みすぎて、取調室の緊迫したムードが壊れそう。

そんな時、カツ丼は冷めても美味しいし(むしろ、味がしみこんで美味しく感じる場合だってあるし)、野菜+たんばく質(カツと卵)+炭水化物(白米)でボリュームもある。

しかも、無機的な取調室にどういうわけか似合う!
そして「食えよ」という俗ぽい表現もしっくりくる。

実際に取調室でカツ丼が食べられているのかどーか。それは知らないけれど、警察が舞台となったドラマに出てくる消え物(セットの小道具である食べ物のことを、こう呼ぶ)にカツ丼を起用した人はエライ。
絵になることをわかっていらっしゃる。

さてカツ丼のカツとは、フランス料理「 Côtelette(コートレット)」(英語圏はcutlet)が由来。
もともと仔牛肉にパン粉をつけて油で炒め焼き、揚げ焼きした料理です。

これが日本に伝わり、仔牛肉ではなく豚肉を使用することで「ポークカツレツ」という名前に。
フランス料理の老舗、銀座の煉瓦亭ではポークカツレツにデミグラスソースをかけて温野菜を添えたものだったといいます。

きっとこのポークカツレツが発端となり、カツ=豚肉に衣をつけて揚げたもの、となったのでしょう。

いちおう、チキンカツ、ビーフカツ、メンチカツとカツのバリエーションはありますが、「カツ」の王者は豚肉でしょう。

フランス料理に由来するカツを割下で煮て調味し、玉ねぎなどを卵でとじ、それを丼によそっこゴハンの上に乗せてつくられる、カツ丼。
それはもう日仏が融合(フュージョン)した味わい。

フレンチと和食のエッセンスをとりいれた「フレンチ懐石」なんぞより、はるかに庶民的に支持されるのは、こっちのフュージョン。

という新しい視点でカツ丼を食してみたくなった。
上の写真は生まれて初めて作ったカツ丼。

割下でカツを煮るという発想、そしてこのカツがフランスに由来する料理で、今やすっかりと日本人に愛される味となったことにいたく感動したわけで。
最初にカツ丼を考案された方はさぞかし味覚の冒険を楽しまれたことでしょう。

また、栄養面も一目おかれているのが、カツ丼。豚肉を衣をつけて揚げることで、お肉に含まれる水溶性のビタミンB1(疲労回復効果)を衣がキャッチして効率良く摂取でき、ご飯(糖質)の代謝を良くします。

さあ、カツ丼食うか。