宇宙人、地球行きたくないってよ。映画『美しき緑の星』

2016年5月23日映画の紹介

友人に面白いからぜひ見て!とすすめられた映画『美しき緑の星』。(La Belle Verte、1996年、仏、監督・主演コリーヌ・セロー)
この作品、動画サイトから削除されることがあるらしく、早めに見た方がよいとのこと。

ストーリーは

豊かな自然のなかで、人々が助け合い、貨幣制度を必要としない美しい惑星がありました。
その星では、定期的に他の惑星に誰かを派遣するのですが(音楽家バッハもこの惑星から派遣された設定)、誰も行きたがらない惑星がありました。

その惑星とは・・・なんと「地球」でした(;_;)

地球はとても危険で野蛮な原始的な星だと評されていて、誰も行きたがらない。ですが、1人の女性ミラが(地球人と宇宙人との間に生まれた。地球は母親の国)地球に行くことを決意します。

フランス・パリに舞い降りたミラは、ときどき自分の身を守るために「切断プログラム」を使います。
これは、人間には原始的に備わっている大切な感覚があるはずなのにそれを忘れ、社会の既成概念や常識を軸に生きている人の意識を切断するもの。

宇宙人のミラがこの切断ブログラムを使うと、面白いように人間は本能のままに生きるのです。

ミラはしばしばこのプログラムを使いますが、地球全体が「切断プログラム」が必要かというとそうではなく、アフリカではミラがやってきた惑星と同じように暮らせる国もあるのです。分かち合い、助け合い、原始の感覚のまま生きている部族の人たちが住む地球のかたすみにある大地・・・。

ミラや彼女の後を追って地球にやってきた2人の息子たちによる「切断プログラム」のビフォー・アフターが痛快。
彼らに接した人たちは、大事なものを思い出していくのです。

映画『美しき緑の星』は1996年公開の作品。
この頃、日本では龍村仁監督のドキュメンタリー映画『ガイアシンフォニー』が日本各地でインディペンデント的に上映されていました。

映画の内容について一切知らなかった私は、親戚から 「いい映画があるから。勉強になるけん、あんたも見とき」と近くで行われた鑑賞会へと連れていかれたクチ。

ジャック・マイヨールという素潜りの大家を知ったのもこの作品で、それまで「ザ・エンターテインメント」なハリウッド作品しか見たことのなかった私には、人間の内面を掘り、可能性を示した『ガイアシンフォニー』シリーズにはたいへん衝撃を受けたのでした。映画には、このように人の精神面にフォーカスした作風が存在するのだと。

エンドロールが終わった後、観客が拍手した作品なんて、私の人生上、後にも先にもこのガイアシンフォニーだけ。
当時は「インターネットというものがあるらしい。便利らしい」というウワサが流れはじめたネットの黎明期。PHSが登場したのもこの頃。どちらも私には必要ないと思っていたのに、今ではなくてはならないものになっている。

『ガイアシンフォニー』『美しき緑の星』が生まれたこの頃、いわゆる「わかっている人」たち(覚醒している人たち)は世の中を危惧し、作品にメッセージをたくし、分離した思考の弊害を、そして来るべき未来がそれで汚染されてしまう・・・、そして「当たり前と思っていることは実は当たり前ではない」と、伝えたかったのかも。『美しき緑の星』はそのメッセージの内容を俳優が演じ、『ガイアシンフォニー』は実在の人物を通して。

この地球で生きていく者として大きな一石を投げかけられるこの作品。「心して見なければ」という意識が働くのですが(私にも切断プログラムが必要か!?)、ユーモアがたくさん盛り込まれたコミカルな作風なので意外にサクッと見れます。

作品は https://vimeo.com/129957744 で。

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