顔の見えない相手に「Yes」と言わせる電話営業テクニック。はじめに

2015年11月8日ライフスタイル

今日から7回にわたって「顔の見えない相手に『Yes』と言わせる電話営業テクニック」を連載します。
このお話は20年以上電話営業の分野で活躍するTさんへの取材をもとにまとめたものです。

「あなたは、いいカラーを持っているね」

私が結婚後、上京して就職したのは、東京・西新宿にあるアイランドタワーにオフィスのある企業P社でした。ちょうど平成元年のことです。

上京して友人もほとんどいなかった私は、仕事を通して気の合う友人と巡り会えるかもしれない、と淡い期待を抱いて、たまたま知人から紹介された、電話営業という世界に飛び込んでいったのです。

初出勤日、お客様に電話をかける時のマニュアルを渡され、上司の前で読み上げることになりました。その時に言われたのが、冒頭の「あなたは、いいカラーを持っているね」という言葉です。

緊張しながらも、心をこめてマニュアルの文を読み上げたことは間違いありませんが、上司のその言葉には自分で言うのはテレますが、「ついに、大型新人を発掘したぞ」という大きな期待感が込められていたように感じました。

その言葉は、私が電話営業にまい進できた「運命の言葉」だったように思います。その時から私の内側に根を張り、現在にいたるまで、私を支えてくれている言葉だからです。

現在はもうなくなったP社が扱っていたのは、パソコンとパソコンに用いるソフトのセットでした。当時はデジタル全盛の現在のように、パソコンを使用する人や企業はそれほど多くなかった時代。パソコン=ワープロと思っていた人が圧倒的に多かったように思います。

■社員からフルコミッション契約に

P社の給与は月給制で、基本給+歩合でした。P社が販売していたパソコンとソフトのセットは、総額で五十万円以上するもの。

ちょうど「バブル」と言われた時代で、その恩恵に預かっていた人も多かったと思います。しかし、電話で営業をかけると、パソコンのパの字も知らない人がほとんどで、潤っていた時代とはいえ、誰でも購入してくれるような金額の商品ではありませんでした。

その商品は、1人が月平均5本売れたら、まずまずの成績といわれていました。しかし、私は月にして平均、10本は売っていたのです。社内でも売り上げは常にトップクラスでした。

不思議なことに、私が契約までこぎつけた人はキャンセルする人が少ないのが特徴でした。同僚が同じ数だけ販売しても、いざ上司がクロージングをかけると、キャンセルする人が目立つのに、どういうわけか、私の場合はごく稀だというのです。

「自分でがんばった分だけ、反映されるから面白い!」と、私はこの仕事に夢中になっていきました。

基本給よりも歩合で大きく稼ぐ金額が上回る月が続いたので、入社して数年後、会社とフルコミッションの契約を結びました。これは会社で電話営業をするためのスペース(デスクと電話)を自分で借りて、仕事をするというシステムです。

この契約を結び、毎月、会社には事務所代として10万円を会社に払うことになりました。けれど、フルコミッションでは、契約をとればとるだけ、それまでの歩合給より大きな金額が自分の報酬にはねかえってきます。おかげで相当大きく稼ぐことができました。結局この会社には17年間、お世話になりました。

■マニュアルを読むより「勘」を働かせること

「最後の営業マン」とは、P社の上司が私に仰った言葉です。

上司は、顔の見えない相手、つまり「声」だけでつながっている人なのに、よく契約を取るものだな…、と感心していたようです。

対面の営業と異なり、私たちのように電話をツールに用いる営業マンは、かなり特殊な存在です。おそらくマニュアルを丁寧に読むことよりも「勘」を最大限に働かせることが、求められているのではないかと思います。なかには、私の電話営業の能力を「特殊能力」と評する人もいました。

ふりかえると、私は特別な能力を意識して磨いてきたわけではありません。淡々と日々、するべき仕事をこなしてきたつもりです。

よく、素肌の美しい人に、その美肌の秘訣を尋ねると、決まって「何もしていない」という答えが返ってきます。しかし、そんな人ほど、毎日コツコツと「何か」をしているものです。

けれど、それは本人にしてみれば、取るに足らない、ささいなものだったりするのです。

私も好成績を残すことの出来た秘訣を振り返って考えると、毎日の生活を通して知らず知らずのうちに、身につけていった「センス」が鍵かもしれない、と思うようになりました。

それが初出勤日に初めてマニュアルを読み上げた私に上司が言ってくれた「カラー」かもしれないし、人によっては「哲学」や「信念」という言葉にも置き換えられると思います。

このテキストは、電話営業歴30年以上の私がまとめた、電話というツールを用いる仕事の成功へのノウハウをまとめています。

これは、電話営業やテレフォンアポインターなど、普段から電話を使った仕事をしている人をはじめ、対面の営業や普段の人間関係に生かせるものと自負しています。

成功とツキは表裏一体といいます。あなたもこのノウハウを自分らしい「カラー」に染め、成功を手に入れていただきたいと思います。