数年後には100歳。池袋の美しきレトロ建築・自由学園明日館

ライフスタイル

所用で池袋へ。
メトロポリタン口を出て、散策することにしました。

目指すは自由学園明日館(みょうにちかん)。
こちらは国の重要文化財であり、アメリカの建築家であるフランク・ロイド・ライトが設計したことでも知られています。(共同設計者として、ライトの弟子である遠藤新もクレジット)

池袋という大都会の喧騒を背にし、静謐なたたずまいの住宅街を通りぬけて、明日館に到着。
この建物、いつも不思議に思うのですが、まるで「登場感」がない。
1921年に建造されたレトロな趣を醸す、かつての学び舎だった建物は住宅街でも異色のはずなのですが、しっとりと土地に溶け込んでいることに、毎度驚いてしまいます。

この建物はプレーリースタイル(草原様式)という建築様式を採用。
アメリカ北部に広がる草原地帯を「プレーリー」というのですが、その草原地帯との調和を考えて設計されるのが、プレーリースタイル。

軒高(建造物の高さ)をおさえ、水平線を強調するのが特徴である、この建築様式を好んだライトは、プレーリースタイルを確立させた建築家といってもよいでしょう。

シンメトリー(左右対称)に作られ、上の写真ではセンター部分がホール、低層の屋根の部分が教室として使われていたそうです。

明日館の「顔」役はこのホール。ライトは幾何学模様の意匠を用いています。
タテナガに配された大きな窓のデザインにはライトの着想がいたるところに見られます。

明日館のサイトから。

ライトは限られた工費のなかで、いかに空間を充実させるかということに尽力しました。それはこの窓一つにも明確に表れています。ライトは建物全体の意匠を幾何学模様にまとめ、ホールの窓には高価なステンドグラスを使用する代わりに、木製の窓枠や桟を幾何学的に配して工費を低く抑え、かつユニークな空間構成を実現したのです。

明日館は、自由学園の創立者である羽仁吉一・もと子夫妻の私財を投じて建築されたので、ライトは限られた予算におさまるよう、実現可能な意匠や用いる資材などを考えました。
そこには学び舎という空間が多くの子供たちに影響を与えること、そして施主である羽仁夫妻の教育哲学への理解が欠かせなかったはずです。

1921年の建造だから、あと数年で100歳を迎える自由学園明日館。
100歳を超えても、ずっと変わらず、この地にあってほしいものです。

自由学園明日館2image_R

関連エントリー
「豊かな高齢社会」がテーマのとらやの展覧会@東京ミッドタウン
注目のベトナムへ。「陸のハロン湾」こと奇岩と静寂のタムコック
建築家ザハ・ハディド永眠。世界に残された作品、永遠なれ!