おむつはずしというアイデア『介護起業』を読んで
「おむつはずし」と言えば、多くの方からは「ああ、赤ちゃんの…」という言葉がかえってきそうです。
高齢社会を迎え、尿失禁や排せつ障害のため、おむつを日常的に用いる高齢者が増加しています。
要介護3以上、そして適所・適切な使い方はやむを得ませんが、安易で、不必要なおむつは人の尊厳を奪ってしまうことになります。
排尿に関して、おむつを使う原因の多くは次の2点です。
1.「過活動膀胱」膀胱容量が低下することから、頻尿と尿失禁が起こる⇒薬物療法
2.「機能性尿失禁」認知症や日常生活動作の低下することから、自力でのトイレ排尿ができなくなる⇒介護者の対処
2の機能性尿失禁については、いかに介護者が対処するかが求められます。
介護する側は1日何度もおむつの取り替え作業が発生します。
介護者の身体的、心理的、社会的な面に影響を及ぼすことが考えられます。
実際、それは介護職を離れるきっかけにもなっていること。
■高齢者がおむつをはずすために
高齢者の「おむつはずし」を唱えるのは『介護起業』の著者、杢野暉尚さん。
社会福祉法人サンライフ、社会福祉法人サンビジョンの理事長を務めている方です。
「おむつはずし」は杢野さんの法人で実際に行われている方法。
利用者のおむつをはずすことで、介護者の負担の軽減も考えられます。
その方法を簡単に説明すると
利用者に水分補給と口腔ケアを行い、元気になってもらい、自分でトイレに行けるようにすること。
足腰の軽いリハビリをスタートさせて、少しずつ筋力を付けていきます。
※足の持ち上げなど、ハードなリハビリではなく、足腰の回復を待つ
利用者が自分でトイレに行き、排泄できるようになると、自然とおむつは取れていくという考え方です。
また、ユニット(小規模単位で介護を行うシステム)の仕事についても書かれています。
従来のユニットは調理、洗い物、掃除などを1人の職員が担当。
これは介護職員の業務がおろそかになりがち。
そこで、調理、洗い物、掃除などを分業化して、それぞれ専門のパートタイマーに任せる。⇒そうすることで、介護福祉士は専門職の能力を発揮できるというもの。
せっかく専門的な技術を持つ、社会福祉の一旦を担っている介護職なのに、「3Kな仕事」といわれるのは残念でならないと、杢野さんはおっしゃっています。
この『介護起業』は、介護業界に参入するベンチャーのために書かれたビジネス書という位置づけなのでしょうが、現在の市場やデータも掲載され、わかりやすく書かれています。いわば介護の業界を知るビギナー向けの本。
参考になるポイントが多いので、続きます。